BtoBのブランド活動の経験談

わたくしが素材メーカーのブランド活動を初めて手掛けたのは約10年前でした。
当時、定年間近の或る事業の部長さんから酒飲みに誘われた際、定年後の事業部の行く末を心配し、相談を持ち掛けられたのがきっかけでした。

「八角さん。今の事業は40年前から製造販売している素材ばかりです。国内のライバルメーカーが幸い少ないこと、そして筋の良いお客さんがいてくれるお陰で何とか持っている。ただし、今後海外メーカーが大量生産によって、品質もそこそこで、より安いものを出してくる可能性があります。価格競争になったらひとたまりもありません。」
「また、開発サイドの停滞も気になります。わたくしが現役のころはお客さんの要望があった際、すでにその製品開発は完了しており、『待ってました。はい、出来てます。』とすぐに出せる状態でした。しかし、今はお客さんの宿題に追われている有様で、。。。」
(中略)
こうしたやり取りの中、閉塞しつつある状況をいかに打開していくか、回答を求められました。
結論として、開発サイドのみならず事業全体を巻き込んだブランド活動で社員全体の質を向上させようという提案をし、面白いからやってみようということになりました。

言ってはみたものの、やったことがないため、正直責任を感じざるを得ませんでしたが、常々世話になっている部長さんのためにも何とかしなくてはということで、ネットで調べる、関連の本を読み漁る、ブランド関連のコンサルタントに相談に行く、さらに講演を聴く、とにかく短期間で情報を集めました。
ただし、当時はブランド活動といえばBtoCに基づくものがほとんどで、キャッチフレーズを考える、メディアを使って広告を打つなどのもので、自社のケースに当て嵌めることは難しく(というよりは無理)、無いなら自分で創るという信念をもって進めました。
そんな中、集めた情報の中で最も役にたったのが「横河電機さんのBtoBブランド活動に関する論文」でした。まさに目から鱗が落ちる思いで、自社でやるべきことがより明確になりました。

その後、事業部全体を巻き込んだブランド活動がとりあえずスタートしたのですが、事業部の目標「顧客満足度世界一」を達成するために、結果としてブランド活動に関連付けて営業・開発・研究・海外拠点など全体巻き込んだ国際プロジェクトへと発展させて進めることになりました。

(具体的活動内容は省略)

お陰様で、ブランド活動当初の顧客アンケートの結果から6年後に行われたの顧客アンケート結果もかなり上昇し、わたくしが担当した期間は一度も赤字を出したことのない事業部となりました。目標の顧客満足度世界一も達成しているレベルと考えています。今では、全社のみならずグループ全体でモデルケースの事業部になったと感得しています。

その活動を通じて生まれた成果物の一つがオリジナルの「グレードチャート」というツールです。
このツールは、営業サイドがコンサル営業できるように考えたものです。
ベースは特許情報ですが、特許情報を営業サイドも使えるよう加工した画期的なものと自負しています。
今では、国内のみならず海外の営業マンにも使ってもらえるツールとなっています。

最後に、ブランド活動を成功に導くためには、「トップの理解とすぐに結果を求めない我慢。関連社員全員を巻き込むため、目標を明確にして活動を継続・評価する姿勢。そして、常々の啓蒙教育。」と感じています。

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