技術ブランド化におけるキーパーソンの役割
今年になって、セミナー会社や日本技術士会などにおいて、企業における技術ブランドについて講演する機会を頂きました。
ブランドと言いうとマスメディアを使った一般需要者への意識づけのようなイメージを持たれる方も多いと思います。
当時、私が勤めていた素材メーカーのようなB2B企業でも、ブランド活動に対する抵抗感が根強く、実行に移すまでには相当高いハードルがありました。
しかし、これまで技術ブランド活動が、企業収益や社員の意識改革の両面において、成果なしやマイナスに作用したことは全く無く、活動の意義が大いにあったと強く実感しています。
技術ブランドとは、企業の保有している独自のテクノロジーや素材などの名称をブランド化したものであって、先進性や革新性、信頼性、機能性、高品質などを強く訴求することができるものです。
そして、それが達成された場合の効果は非常に大きく、単にB2B のみではなく、B2B2CやB2E(Employee)など、幅広いステークホルダーに対しても求心力を生み、企業ブランド全体の価値の向上を図ることができると言われています。
ここで、B2E(Employee)とは、「社員のモチベーションのアップ(意識改革)」の効果を目的とした活動であって、技術ブランド化には、このB2E活動が極めて重要になってきます。
そこで活躍するのがキーパーソンです。
その名の通り、鍵を握る人財(「人材」は使えば摺り減る、「人財」は使えば使うほど価値を生み出す)の事ですが、一般には経験豊富で事業全体を見渡すことができ、成功の鍵を握るやり手を意味します。
キーパーソンの役割としては
(1)ブランド戦略の計画実行のための進捗確認と活動の推進(PDCAの推進)
(2)ブランド戦略に関わる全拠点の活動の把握と報告
(3)知財実務の理解と推進
(4)顧客・競合情報の収集と共有化
などです。
キーパーソンには各活動に関わってもらい全体を把握かつ活性化して貰うことになります。
こうしたキーパーソンを持つ事業部のブランド活動は滞ることなく活性化されていき、確実に目標を達成していきます。
ところで、キーパーソンたる人財がいない場合はどうする必要があるでしょうか。勿論、キーパーソンを育てるしかないでしょう。
実はキーパーソンがいない場合、活動の鈍化を回避するため、並行してキーパーソンを育成する活動も行ってきました。
それではどのような社員を将来のキーパーソン候補として選定するのかですが、私は、若くてフットワークが軽く、かつ意欲的(高い知識・意識)な部員を選定の条件としました。具体的には入社5~7年目の管理職手前の若手です。管理職手前になると仕事全体が見え始め、かつ責任感も出てきます。しかも管理職になるという目標を持っているため、ブランド活動に付随した各活動にもかなり意欲的に取り組んでくれます。
彼らには、前述した(1)~(4)の活動が行えるよう、内外の顧客・競合の技術・知財状況から財務諸表の理解まで幅広く教育します。
こうした若手を積極的にキーパーソンの候補として育成していくと、将来、管理職になったらOJTで部下を自然と育成出来るようになっていきます。若手に事業全体を立ち回らせ、人脈を積極的に形成させ、そして成功体験を積ませることが肝要と考えています。
企業における技術ブランド化は、システムだけの問題ではなく、こうした社員の育成こそが成功の大きな要因になると考えています。