B2B事業におけるテーマ発掘の阻害要因

B2B事業は、限られた数の顧客メーカーを相手にしているケースが多く、かつその顧客の幾つかが規模の大きいロイヤルユーザーであった場合、安定した事業経営になる利点がある。そして、ロイヤルユーザーとの強い繋がりは事業収益を大きく左右するため、ロイヤルユーザーからの宿題に積極的に取り組むことは、事業における優先順位の高い研究開発となっている場合がある。

こうした従順に勤しむ姿勢が、常にロイヤルユーザーに対して好印象を与え続け、ブランド化を形成しているのかといえば、必ずしもそうではない。

確かにビジネスにとって大切な信用と信頼は構築されるであろう。しかし、メーカーは常に市場の要求と共に、競争によって新しい機能やより優れた品質の製品を作り続ける宿命を背負っている。こうした厳しい状況の中で、単に従順さによる事業姿勢では、意外にも顧客メーカーにとって物足りなく感じられるようだ。

実際、前述の様な従順さでビジネスを展開してきた事業であっても、ロイヤルユーザーの心の内は「指示待ち」の不満が芽生え始め、積極的に発信してこない苛立ちがあることが顧客アンケートを実施した結果、わかってきたからだ。

すなわち、こうした顧客の不満を払拭し、市場要求を先取りした新たな研究テーマによる新製品の提供が求められることは、誰の目から見ても明らかであろう。

ところで、どのように対応したら新規テーマを見つけることが出来るのか。

新規テーマ企画(プロジェクト)など、特別な組織を設置して、試行錯誤を繰り返してきた経験のある企業も多いのではないだろうか。

当時、研究開発当初に広く捉えていたテーマや柔軟な発想の入り口が、開発が進むにつれて、いつしか次第に尻窄みになっていき、最終の出口には利益の低い製品化にとどまったケースがある。こうした反省から、技術開発のオープンイノベーション化への移行が叫ばれた。

はじめに広かった間口が次第に尻窄みになる理由は、途中の段階で様々なフィルターに掛けられ、選別されるからである。特に、このフィルターによる選別効果はロイヤルユーザーの宿題に追われているメーカーほど顕著になる。

そこで、この尻窄みの段階で削ぎ落とされたものに知的財産としての価値や市場価値を見出すことで、選択のバリエーションを多くし、出口での利益も最大化できると考えられた。

それでは具体的にどうすべきか。前述した新規テーマ企画のような特別な組織を設置して、一旦、ロイヤルユーザーの宿題を止めることは現実的にはありえまい。

ならば、通常の業務において自然と価値を最大化できる仕組みを作るべきではないだろうか。

例えば、各フェーズにおける研究開発・市場(業界・競合・顧客)情報の共有化のできるデータベースの構築と活用である。

研究者の持つ情報、開発技術者の持つ情報、営業の持つ情報、そして知的財産担当者の持つ情報を、「普段の企業活動において」データベースにインプットして共有化出来たら、途轍もなく強力な武器になるのではないか。

実際に、こうした取り組みを行い、戦略的な共有データベースづくりと活用を行った結果、普段の企業活動からテーマ発掘に至った企業がある。

B2B事業にとって、顧客メーカーとのパイプを強くすることは重要であることには変わりない。しかし、宿題に追われて視野が狭くなってしまうと、思わぬ顧客離れを引き起こす要因を自ら作ってしまいかねないのではないだろうか。

価値を最大化するためにも、「普段の企業活動において」あらゆるフェーズでの情報の取り込みや活用、そしてその取組による工夫は大切である。

(「B to B企業の事業活性化の為のブランド化戦略とその仕掛け」―継続的に黒字を出し続けるために必須のB to B 企業のブランド化戦略とは― セミナーから 八角講演内容の一部)

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