社会のための新しい材料学「社会材料学」を読んで

日本技術士会・中国本部 会報 No.20(2020 年 9 月 1 日発行)に投稿されました、川本 明人さんの論文を拝読する機会がありました。

川本さんは日本技術士会・中国本部に所属されておられる博士・技術士(金属部門)であり、川本技術士事務所の所長でもあります。

社会技術論の見方(視点)・考え方(思考)を、伝統的な材料学に応用し、社会の側から材料学のあり方とその教育の有り方を論じられております。材料開発に携わる方こそ、倫理とその教育の重要性を感じ取っていただきたく、一読をお薦めいたします。

以下に、論文の一部をご紹介いたします。

なお、全文をご希望の方は、ぜひ、yasumicogr@gmail.com までお問い合わせいただけますと幸甚です。川本様のご厚意により全文をお送りいたします。

【新しい材料学 「社会材料学」の試論】

新しい材料学「社会材料学」のコンセプトは、材料学の社会化、すなわち、「社会の中の、社会のための」を標榜し、諸社会的問題の解決への貢献である。

社会材料学は、個別材料学の専門知をベースに、バイオ工学、環境工学、情報工学等の自然科学系諸理工学を総合し、さらに経営学、社会学、心理学、哲学等の人文・社会科学の諸学術を統合した諸学術『横断型の統合材料学』である。(中略)

そして、「社会材料学」の教育の目的は持続可能な社会の実現である。

正四面体構造で示されたそれぞれの頂点に位置する教育科目は、

①総合的材料学(基礎科学、諸理工学)、

②環境学(環境と社会、物質・材料の再生循環論)、

③リスク学(リスクと社会、リスクマネジメント、リスクコミュニケーション)、

④技術者倫理である。

①は専門教育、②、③、④の3つは工学リベラルアーツ教育の機能を有する。

上記4つの教育科目は、相互補完的に密接につながり、社会的要請(持続可能な社会の実現)に連結している。

「社会材料学」の不可欠な教育科目は、技術者倫理とリスク学である。(中略)

外部から強制される法規制・規格だけでは、組織への忠誠心の前には無力であり、個々人の良心(善悪わきまえ区別し、正しく行動しようとする心の働き)に基づく技術者倫理の涵養が必要となる。そして、「社会材料学」教育の肝は技術者倫理教育である。

社会的問題の解決を誠実に実践するのは人間であるから、倫理観が不可欠である。

なお、本論文の続報が近々出されるとのことですので、投稿があった際は、またご紹介させていただきます。

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