環境問題と科学技術者のあり方

かなり前のことになりますが、環境問題と科学技術者のあり方について、某大学の総長が大変ためになることを話されていたことをふと思い出しましたので、ご紹介いたします。

「人間は宿命的に環境を破壊する生き物である。周辺の問題を考えながら学問をすべきである。つまり、研究の展開を大きな視野(一般教養)で考える必要があろう。

去年、中国を視察した際、揚子江ダムの問題に触れる機会があった。私が中国側にダム建設による環境問題の提言をしたところ、彼らはそれに対して厳しく反論してきた。ダム建設はむしろ(最終的な結論として)環境を守るために行っているものであると。つまり、揚子江のダム建設により洪水を防ぐことが出来るというのである。仮に洪水が起こったら1・2週間も周囲は水の底に沈んだ状態でいる。日本の洪水は翌日には完全に水が引いている状況とは訳が違うというのである。この大洪水こそ、環境の破壊であり、我々はそれを防いでいると言うのである。

 つまり、こうした話から得るのは、ダム建設が即ち環境破壊という単一の式として解を求めるのではなく、それから派生する様々な問題を取り上げ、連立方程式として取り扱い、その解を求めなくてはいけないのではないかということである。即ち科学技術者は科学分野だけでなく、他の分野も総合して考えねばなるまい。

 産業による公害は科学による対策が不十分であるから起こるのである。もっと科学技術を展開し、進めれば環境破壊を防ぐことが出来るのではないか。環境を破壊するという行為は責任ある人間性の知識の欠如に原因がある。そういった意味で、人格を磨く必要があるのではないか。大人になる条件とは人格を持つことである。

 そして、工業先進国の義務は、環境問題を考えた新しい産業を発展させることである。炭酸ガスの問題を正確に論ずれば、重大な危機にあるといえよう。日本ではこの問題に対する先覚者の評価があまりにも低い。新しい産業を作ることで、同じエネルギーでより効率良い仕事が出来る筈である。それは世界への貢献でもある。それには暗記だけで得た知識を持った者ではなく、創造的仕事をするグループを育てる必要があろう。そういったことから、人間教育の大切さをしみじみと感じるのである。」

当時、この話を聞いて鳥肌が立ったことを思い出しました。「科学技術に携わるものだからこそ、知識だけではなく人格を磨かなくてはならない。」

箴言として心に刻んでおかねばならならないものと感じています。

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