「持続可能な将来のため」BASFの画期的取り組み
12月4~6日の3日間、幕張メッセで「高機能素材」・「光レーザー技術」・「液晶・有機EL・センサ技術」が一堂に会する大きなイベントが行われたので、早速、情報収集として足を運びました。
イベントでは必ず無料セミナーも催されていますので、各企業の著名な方々の話を聞くことができます。
今回は、その中のセミナーから、今回はドイツ化学メーカーのBASFのサステイナビリティ―経営を加速する取組みをご紹介いたします。
〇BASFの事例
BASFは2018年度の売上げが626億7,500万ユーロ(8~9兆円)にも上る、世界最大のドイツ化学メーカーです。(BASF;Badische Anillin und Soda-Fabrikの頭文字)
彼らの取り組みは、二酸化炭素の排出量を減らしつつ、生産量を数倍に増やすことです。
化学メーカーの持続可能な将来のためには、二酸化炭素の排出量の増加を伴わない成長を実現することが不可欠と考えてのことです。
更に、海洋廃棄物の70%がプラスチック製品であることから、その製造者たる化学メーカーが率先して、リサイクル問題にも取り組んでいかないくてはならないとの考えがあります。
具体的成果と数値目標に関しては、1990年度の生産における二酸化炭素排出量が4,010万トンを起点として、2018年度は1990年度の生産量の2倍であったが、二酸化炭素排出量が2,200万トンと半減を実現しています。さらに2030年度は、生産量を1990年度の生産量の3倍にするにも拘らず、二酸化炭素排出量は2018年と同量の2,200万トンに据え置く目標となっているのだそうです。
これを実現する具体的方策として、最先端テクノロジーへの投資に加えて、BASFならではフェアブント拠点(世界6か所の統合生産拠点)による各製造工程で排出されるものを無駄なく使いきる生産プロセスを実現するというものです。
つまり、「原料から製品化までの流れをすべて一括してある拠点で行い、その過程で排出するものをすべて無駄なく使いきる」という方法です。
これはBASFのような超巨大企業ゆえに為しうる取り組みですが、既に数値としても、その成果が表れていることを考えると、或る意味、理想に近い生産プロセスシステムを実現しているということになります。
更に、BASFでは「Chem cycling」プロジェクトに基づいてプラスチック廃棄物のリサイクルを行っております。その方法は、一旦、廃棄物を油に戻してから製造をする方法を採用しており、かなり無駄に感ずるプロセスですが、製造物はニート品と同じものとなります。
この方法を採用している理由としては、予想通り、リサイクル材の品質への顧客の抵抗があるためとのことです。
我が国のみならず、世界におけるリサイクル材料への理解不足と誤解がまだ根強い故、さすがのBASFも苦肉の策を講じなくてはならないと感じております。