アフターコロナを見据えた台湾の成長戦略

新型コロナウィルスによる深刻な被害を世界各国が受けている中、台湾はその被害を最も最小に食い止めたことから、コロナ対策の成功例として世界から注目されています。

先日、JETRO主催の台湾総統の就任演説の解説を聞いたのですが、台湾はこれまで世界保健機関(WHO)にオブザーバーとして参加したくても参加できなかったそうです。そうした辛さを今回の見事な「民主的」コロナ対策により、国際的プレゼンスを大きく示すことで払拭しました。

新型コロナウイルスによって世界の経済秩序ならびにサプライチェーンが再編成に直面しており、さらに香港の情勢が悪化していることが、アジア太平洋地域と全世界に地政学的な影響をもたらしています。こうした急激な社会変化に対して、台湾は自らの役割と位置づけを見極め、発展のために、産業の優位性をよりいっそう強化していく方針のようです。

先月、台湾政府は、台湾をアジアにおける「高階製造(ハイエンドの製造)、高科技研発(ハイテクの研究開発)、半導体先進製程(先進的な半導体製造工程)」センターを建設する方針を打ち出しました。

さらに、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、クラウドサービス、半導体製造設備などの国際的な大手企業を台湾に誘致して投資させていくと強調し、最も優良な企業を最も優良な工業団地に呼び込むと述べています。特に、これまで台湾は島の北側を中心に発展を遂げてきたため、今後は中部から南部にかけて誘致・発展を進めていくそうです。

この外国企業の誘致による協力関係は、台湾がハード面で持つ強力な受託生産の力をさらに一段上げ、一気に台湾をアジアにおける「ハイエンドの製造、ハイテク技術の研究開発、半導体の先進的な製造工程」センターへと成長させることへの期待があります。 

その効果として、新たな半導体のサプライチェーンが発展すれば、2025年には468億台湾元(約1,700億日本円)の生産高を生み出し、派生する応用方法は4,000億台湾元(約1兆4,530億日本円)の規模となると試算しています。

また、次世代の通信産業に至っては、5G(第5世代移動通信システム)の新たなオープンアーキテクチャ、キャリアクラスのネット周辺機器などをカバーすることになり、関連の生産高は2025年に5,700億台湾元(約2兆710億日本円)に達する見通しです。

そして、台湾のAIを使った産業ソリューションは2025年に3,600億台湾元(約1兆3,000億日本円)の生産高に成長、産業のAI化によって生まれる付加価値は7,500億台湾元(約2兆7,250億日本円)に達すると予想されています。

世界各国がコロナウィルス禍に喘いでいる間に、台湾はアフターコロナの時代を見据え、戦略的に成長しようとしています。台湾の動向からは目が離せない状況となりました。

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